記者コラム

2016.11.15 寝台特急

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 子供のころ、自家用車がなかったことから旅行する際はもっぱら列車で、特に朝早く札幌に到着する寝台列車によく乗った◆狭い3段ベッド、ミニボトルでウイスキーを飲みいい気分になっている中年男性、週刊誌をめくるカサカサという音など、今思えばゆっくりと眠れる環境ではないが、妙なわくわく感で苦にはならなかったことを覚えている◆青函トンネルの開業とともに北海道と東京を結ぶ寝台特急「北斗星」、さらに豪華版の「カシオペア」が運行を開始し、「いつかは乗ってみたい」と思っていた。特にカシオペアは、2人用の客室に豪華な食堂車、ラウンジカーなども魅力で、妄想の中で寝台特急の旅を楽しんだこともある◆その寝台特急も北海道新幹線の開業と入れ替わるように定期運行を終えた。速さにおいては新幹線に遠く及ばない寝台特急だが、夕暮れから夜のとばりに消えてゆく街並み、真っ暗な車窓に流れる踏切音、そして夜明けを迎えて列車内から見る朝日など、いかにも「旅」を感じさせる情緒があった◆もし寝台特急の臨時運行があればぜひもう一度、列車の「旅」を楽しんでみたいものだ。
(中村)