記者コラム

もったいない精神

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 先日、しゃきっとプラザで開かれたきらり☆女性セミナーで、歴史考証家の岸本良信さんの講演を聞いた。武士の内職からトイレ事情、時代劇との相違点など江戸時代の生活や文化、風俗をユーモアたっぷりに紹介。その中で「使い古されたゆかた」の項目には日本人の美学ともいえる“もったいない精神”が記されていた◆昔の浴衣は生地で買って母親が子供用に縫って仕立てた。肩や腰上げの部分を縫い上げておき、成長に合わせて解く。その後は弟や妹へのお下がりとなり、布地が弱くなると赤ん坊のおむつにし、さらに古くなるとぞうきんとして使う。古い浴衣は水をよく吸うので便利だったそうだ。そしてボロボロになれば最後はたきつけにした。木綿なので燃やせば二酸化炭素と水に戻り、これが江戸では当たり前のリサイクルだったという◆「そんなの昔は当たり前だった」という方も多いだろうが、今の時代おむつは衛生的な使い捨てタイプが主流で、たきつけを使うストーブもほとんどない。別にぜいたくをしているつもりはないが、江戸時代の人が今の日本を見たらどう感じるだろう。物を大切に、最後まで扱うもったいない精神だけは常に持ち続けたいものだ。 (中村)