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記者コラム

「粋」

 「粋(いき)」という言葉を聞かなくなった。粋とはすっきりと物分かりのいい気立てや振る舞い、さらには人情の表裏に通じ、ときには遊里、遊興に精通していることを指す◆この粋という言葉、元々は上方文学の好色ものに見られる「粋(すい)」の精神が、江戸に移って「通(つう)」となり、さらに江戸時代後期には「意気」の字を充ててあか抜けた色気を持つ、気性のさっぱりした女性を指す言葉となった。人情本や歌舞伎の世界に多く見られ、野暮の反対語として江戸女の理想とされたという◆世界に目を向けると、日本人以上の粋な人は大勢いる。中でもイギリス紳士の粋は群を抜くこだわりのようだ。彼らが持つコウモリ傘。これはあくまでもおしゃれのための小道具で、雨の日でも濡れるのを覚悟で傘をささないという。中にはお気に入りのコウモリ傘を常に持ち歩き、何年も開いたことがない紳士もいるらしい◆粋は見方を変えればキザにも映るが、気取っていて相手に不愉快な思いを与えるキザに対して、粋はあか抜けた身のこなしで相手に好感を与えるさわやかさを持つ。キザにならず、かといって野暮にもならないよう、粋の真髄を極めてみたいものだ。 (中村)

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