記者コラム

東日本大震災の復興

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 昨年度末までの2年間、宮城県山元町に派遣された美幌町職員の西俊男さんに話を聞く機会があった。テレビでしか見聞きできない東日本大震災の復興の様子は、現地で携わる人と大きなギャップがあることも知った。それは、長い歴史を刻んできた土地柄とも大きく関係している◆農地の集積化を業務とした西さん。土地の移動を相談するのだが、先祖から伝わる土地を手放したくないという人が多い。都市再生にしても、高台移転に難色を示す住民。時間をかけて交渉するのは避けられないのだという◆福島の戻れないふる里も見た。「ふる里がなくなることは分かっても、自分には理解するだけの経験がない」。プロ野球の楽天優勝を喜んでも、被災者たちは東京五輪開催に浮かれた気分にはなれなかったと話す◆「防災の意識をどう伝えていくか。子供を教育し大人に伝える。逆転の発想も大事」ということも知った。支援よりも自分にプラスをもらった2年だった。復興は前進しているものの、歩みは遅い。だんだん帰らない人が増えてくることに、住民は不安を抱える。だから急ぎ足の復興が必要だ。そのための全国の支援は、まだまだ足りないと実感したという。     (本多)